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ん!お父さん!何ボケーッとしてんの!お父さんってば!」 ハッと飛び起きた。誰かが私を強く揺さぶっていた。視線をあちこちに動かす。目の前に早紀の顔。心配そうに私を見ていた。 「・・・早紀?え?ここは?」 「ここは、じゃないよ。しっかりしてよ。自分の仕事場じゃん」 言われて、ようやく今自分の居る場所が勤務先の自分の持ち場である事が判った。向かいの席に座っている課長もじっと私を見ていた。上司の目の前で寝ていた、という訳か。そう考えると、顔が熱くなった。後で何か言い訳を考えなくては。そう思ったところで奇妙な事に気付いた。 「・・・早紀、ここで何してるんだ?今日、学校は?」 「何その言い方。弁当忘れたから持ってきてあげたんじゃん。遅刻するのも覚悟でさー」 答えになっていない。その程度の事なら妻の理沙が持ってくる筈だし、それが出来ないにしても、わざわざ早紀が代わりにする事じゃない。私は昼飯を何とか出来ない年齢じゃない。矛盾を指摘しようとした時、早紀のすぐ後ろに妻が立っていた。 「・・・り、理沙、何してるんだ・・・」 「何ってお弁当届けに来たんじゃない。これで何度目よ、もう」 理沙は呆れ顔で応える。 「べ、弁当は早紀が持ってきたんじゃ・・・」 早紀を見た。あっと声が出た。早紀ではなく、茜が立っていた。茜の手には私の弁当箱。早紀の姿は何処にもなかった。
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