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手作り品の販売会。
そこで私は、この日のために作った手芸品を並べて販売の準備をしていた。二日間開催される催しで、私は今日だけの出品。
ワンフロアの中に、五十個くらいのブースがあって、お客さんは気に入ったものを買っていくという流れ。
周りでも、各々、着々と準備を進めている。
あれどうやって作ったんだろ、あ、あのデザインかわいい、センスあるなあ、なんて思ってしまって、私の作品、ちゃんと売れるかなあ、と不安になってくる。
けれど、ざわざわと、どこか楽しいお祭りの前みたいな雰囲気があって、初めてだけど、すでにわくわくしている自分もいる。
「これ、きれい」
ほわー、と惹き付けられたような声が聞こえてきたのは、そんな時だった。
テーブルに並んだ作品を眺めているのは一人の女の子。
やわらかな黄色のワンピースに白いカーディガン。茶色がかった黒髪はふわふわとしていて、肩にかかっている。
かわいらしい三日月のヘアピン。
小学生だろうか。
私の作品を眺める様子がかわいらしくて、でも、手に取らずに、きちんと見ているだけだから、そんな様子は大人っぽくも見える。
まだ開始前だから、多分、どこかのブースの方の娘さんだろう。
「きれいでしょう?よかったら見ていってね」
と、キョロキョロと作品を眺める少女に私は声をかける。
「これ、星空?」
その中の一つ、ペンダントを指差して少女が問う。
「そう、星空。きれいでしょ」
「どうなってるの?」
「レジンなんだけど、色をまぜたりビーズを入れたりしているの」
少女が指差したペンダントは、レジンを使ったものだった。
半球の型を使って製作した丸い球のモチーフのもので、マーブルに着色し、中に星や丸のビーズを入れ、星空が内包されているように見立てたもの。
透明なガラスの中に詰め込まれた、星空、夜空。そんなイメージ。
見た目の美しさには自信がある。あんまりきれいだから、調子にのって材料が許す限り作り続けてしまったくらいだ。
「星空、好きなの?」
少女が私を見上げる。
「好きだよ。きれいだから。まあ、こんなにきらきらした星空は、なかなか見られないけどね。でも、だからこそ、こういうのは作りたくなる」
私の言葉に、うん、と少女はうなづく。
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