1人が本棚に入れています
本棚に追加
「まだ売れないけど、見るのはいいよ。大体準備終わったから」
じーっとその星空の作品たちを見ていた少女に、私がそう声をかけると、少女の表情が曇った。
「あー、ごめんなさい。わたし、お金もってないから買えないです。邪魔してごめんなさい」
ピョコンと頭を下げてから、少女はここから離れようとした。
「待って」
咄嗟に私は呼び止める。
「そんなに気に入ったなら、ちょっと待って」
机の下、搬入用の袋から私はそれを取り出す。
「品物はあげられないけど、これなら。ちょっと失敗して表面がデコボコだし、なかに泡も入っちゃったんだけど、これ、あげるよ」
それは、売り物にはできないと判断したもの。
けれど、もったいなくて捨てられなかった。
ペンダントのひもこそ通っていないが、モチーフは同じで、透明の球の中には星空。紫と藍色の背景に、銀の星々。
「いいの?」
「いいよ、あ、ついでに宣伝してよ。こんなの売ってる人がいるって」
ふふっと、私が笑うと、少女はパッと顔を輝かせた。
「ありがとう、お姉さん!」
そうして、丸いモチーフを受けとると、ピョコピョコとかけていった。
「気に入ってくれて、よかった」
なんだかうれしい気分になっていると、開店十五分前のアナウンスが流れた。
最初のコメントを投稿しよう!