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街に雪が降り出した頃、ユキはなかなか公園に姿を見せなくなった。理由を聞くと、忙しい、とだけ言った。ハルは少し寂しかったけれど、このところ具合があまり良くなかったのでちょうど良かったとも言える。
ユキが『忙しく』ない日はいつものように遊んだ。不思議とユキが公園に来る日は雪が振らなかった。だから思う存分雪遊びを楽しめた。
雪だるまを作ったり、雪合戦したり。近所の家のポストにポインセチアの葉を入れるなんていたずらもした。ハルの調子は相変わらず悪かったけれど、寒いのが苦手だと言うとユキは簡単に信じてマフラーを貸してくれた。
ユキは冬をとても楽しんでいた。今までで一番元気だった。白かった頬は赤く染まり、身のこなしも軽やかで疲れた様子は見えなかった。
しかし、冬が終わりに近づくにつれ、ユキの体調はハルと反比例するように悪くなっていった。ユキはときどき、何かを我慢するような表情で、唇を引き結んでいた。
そして、雪が溶け始めた頃――
その日、公園に来たユキの背中には、薄い羽がついていた。
「ユキ、それ」
ユキはゆっくりと自分の後ろを見た。そして全てを諦めたように笑った。
「ああ、もう隠しきれないや」
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