第1章

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 あの角をまがると、あと、5分ぐらいで家についてしまう。いつもなら家で食べるおやつを楽しみにして帰る帰り道。  家に帰りたくないのは、国語のテストでひどい点をとってしまったから。みんないい点数なのに、ぼくはちょっと見せられない。   どうしよう。お母さんに怒られる。お母さんは、怒ると怖い。普段はやさしいけど、テストの点数がひどいと怒られる。  お兄ちゃんが、テストでひどい点をとった時、ものすごく怒られていたのを知っている。  どうしよう。ぼくもきっと怒られる。  ぼくは、国語がとても苦手だ。何回書いても漢字はちっともおぼえられない。全部ひらがなばっかりならいいのに。本も読むのも苦手だ。読めない字があると、たちまち読む気がなくなってしまう。  当たり前のように歩いている道を、右足、左足、一歩ずつ出して歩く。すごいゆっくり歩くのはむずかしい。なんとか怒られない方法を考えなくては。でもどんなゆっくり歩いていても、必ず家は見えてくる。  やっぱり、今日は怒られよう。ひどい点数をとってしまった自分が悪いのだから。苦手なことは、人の何十倍もやらないとできるようにならないかもしれないことはよく分かっているんだ。  そもそも、国語はなんであんなにややこしいのだろう。ひらがな、かたかな、漢字とかたくさん覚えて、文章を読んで理解しないといけない。よく、この時の作者の気持ちはどんな感じですか?とか言われても、ぼくは作者じゃないから分からないし、そんなはっきりしない所がなんだか苦手なんだ。  それに比べて算数は、答えが1つだから大好き。どんなに複雑でも、パズルみたいに注意深く考えれば、必ず答えが見えてくるし、数字とか記号はなんだか見ているだけでカッコイイ!白か黒か、はっきりしている所も迷わなくていい。  だからお母さんは、いつも言う。「算数はもういいから、国語をもっとがんばりなさい」と。  何で、苦手な事もやらなきゃいけないんだ?好きな事だけやっていればいいじゃんか。  あ~もう。頭の中がぐるぐるしてきた。考えても何にも浮かんでこないや。もういい。 怒られる覚悟はできている。ゴクンとツバをのみ、ぼくはふつうの速度で歩き出した。 「何か困っているみたいね」
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