第1章

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 ん?誰もいないのに、この声はどこから聞こえる?空耳? 「ここだよ!ここ!」  何か下から聞こえるんですけど。 「だから、ここだってば!」  え?ドコ?確かに聞こえるんだけど。 「君の後ろ!」  ぼくは、声の主を探して、後ろをふりむいた。  誰もいないじゃん。と言おうとしたら、そこに1匹の猫がいた。え、猫、しゃべるのか? 「オレはシロ。見た目は黒いけどな。猫だけど人間の言葉がわかるんだ!すごいだろー!」  猫がしゃべる?何で?どうして?頭の中、はてなでいっぱいで、何も言葉が出てこない。 「ちょっとぉ、何かしゃべってよ、マモル!」  何で、ぼくの名前まで!この猫は、何者? 「こんにちは」こんな言葉しか出て来ない。 「こんにちは」シロは、うれしそうにあいさつした。 「オレの事は、おいといて、なんかマモル、困ってるみたいね」  そうだった、ぼくはひどい点数をとって家に帰りたくなくて、どうしたらいいか悩み中だった。突然のシロの登場で一瞬忘れてしまった。 「家に帰りたくないんだ」 「ほほう」 「テストでひどい点数をとってしまって、お母さんに怒られるのが怖いんだ」 「ふむふむ」 「どうしていいか悩んでいる」 「そうか」 「やっぱり素直に今回は怒られたほうがいいのかな。う~ん、でもお母さん怖い!」 「…悩むね」 「だろう」  何でぼく、こんなに夢中にシロと会話してるんだろう。まぁ、いいや。何か頭がすっきりしてきたぞ。良い考えが浮かぶかもしれない。 「で、どう思う?何か良い考えが浮かんだ?」  シロは、くるりと後ろを向いた。 「オレは猫だけど、何かが足りないんだ。何だと思う?」  答えをくれると思ったシロに逆に質問されてしまい、ぼくはちょっとだまってしまった。  なぜ、シロはこんな事を言うのだろう。ぼくの悩みとは、まるでちがっていたので、さっぱり分からなかった。 「マモル、早く答えて!オレ帰っちゃうよ」  シロは何て勝手な猫なんだ! 「ぼくの質問にまず答えてよ」 「ああ、テストの点数が悪くて、おかあさんに怒られそうな件ね」 「あれは、簡単なことだよ」 「素直に怒られればいいんだよ。勉強していないマモルが悪い」
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