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男は膝をつくと、妻を見上げた。
「悪かった、お前と子供たちには本当に悪かったと思ってる。だからそんなこと言わないでくれ。俺はただお前の顔が見たかっただけなんだ。俺は今独りなんだよ」
妻は煙の中でケラケラ笑う。
「何を今更。自業自得だ。あんたは本当に自分勝手だ。死んでからはあんたのことなんてどうでもよかったけれど、やっぱり顔を見ると憎くてたまらないわ」
妻の姿がぶわりと大きくなり、男に襲いかかった。
男は悲鳴を上げて頭を抱えたが、煙はたちまちかき消えてしまった。
あとには香の甘ったるい香りと、妻の笑い声だけが残っていた。
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