異世界紀行

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異世界紀行

諸君らは真の暗闇というものを知っているだろうか。己の手さえ見えない。目を開けているのか、起きているのか醒めているのかすら危うくなるものである。加えて宙に浮いている現在においては上下左右もわからない。  そんな暗闇であるはずなのに何かが見える。仄かに赤や緑の光が見える。かなり大きなものの輪郭のようにも感じられるが今までに見たことのないタイプの光で、時折明滅する。距離は他に何も見えないのでわからない。案外小さいのかもしれないが。  「さぁ御覧なさい、神髄である深淵を。貴方たちの言うところの神様や妖怪、悪魔といったものは全てここの住人なのよ。あぁ、宇宙なんかも此処からの派生に過ぎないのよ。」  その刹那眩い閃光が彼女の細い指より走る。その刹那、フラッシュがたかれたかのように辺りを見やることに成功。有象無象のモノ共が蠢くだけで他に何かあるようではない。一瞬なのでよくはわからないのだけれど、僕の知っている地上では見かけたことのない世界である。一番近いのは鍾乳洞などのジメジメした洞穴といったところ。そこに無数のフナ虫ゲジゲジマムシにサンショウウオが大挙していれば尚近しい。     
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