百合丘帰還

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 にしても坂・坂・坂で、家・家・家であり、面白みもない景色の連続であるのだが、丘陵地帯なんので時折見晴らしのいい場所がある。そういう所は風が良く流れ、夏の暑さを少しだけ和らぐ。結構な眺めであり夜空を泳ぐ一反木綿もよく見え、た。え?  「一旦あっちの世界に行ったんだからこういうことは増えるよ、慣れることね」  怪異を覗けばそれ以後も怪異を見、また見られるということのようだ。それにしてもあの一反木綿、僕を見るなり凄い勢いで彼方へ飛び去ってしまったのだが、あからさまに逃げたようにうつる。 する、たまたま通りかかった落ち武者の幽霊。首が無く、恨みつらみが迸る殺気。間違いなく一級の音量たるその落ち武者A曰く。  『寄るな!バケモノめ!怖いっ、寄るなっ、なんでもします許してください』  ときた。訳が分からないので事情を聞くと、  『あっちの世界はホンモノしかおらん。そしてそなた等はあっちの世界のホンモノだ。某のようなこの世で飯事をしているようなニセモノとはわけが違う。そなたは人間のつもりのようだが最早違う。分かっているであろう?』  「は~ん。わかってるじゃない。自分の立場をわきまえているっていうのは尊い。そうだ、私の忠犬を皆に報せるのもいいわね。この辺りのニセモノ集めて何処かでお披露目会するように段取っておきなさい」  『御意。付近のモノを集めおきます。場所は琴平神社にて行おうかと思いますが如何でしょう』  「是非もなし。なんちって」
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