異世界紀行

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 いやいや。流石に君の方がどれだけ美しいことか。ちっぱいではあるが。  「これは、そうね、私とは違うけれど遠からずといった感じよ。で?君って言い方は癪に障るのだけれど、改めてくれるかしら。クミンという立派な名前があるのだから」  ちっぱいで悪かったなと眉間を射抜かれる。デコピンでありながらその威力は絶大で僕は漫画のように吹き飛ばされるのであった。瀕死のダメージかと思いきや案外平気なものである。確実に逝ったと思ったのだが。  「この世界にいる間は少し頑丈にしてあげたのよ。死なれちゃつまらないでしょ、ちょっとワタシと付き合いなさい。下僕としてね」  ふざけるな!僕はそりゃ惨めなフリーターだけれど下僕なんかになれるわけがないだろ。というかですね、これ夢ですよね。わかります。  「現実逃避しても無駄よ。語調が変わってしまうなんて話し手として失格だとは思わないの?下僕なのは確定的に明らかなのだから足掻くだけ損よ。というか一回あそこへ落ちてみればわかるわ」  と言い、僕を奈落の底に突き落とすクミン。まだ僕は宙に浮いたままだったのだ。べちゃっ、という音はしたものの、痛みはまるでない。まるで夢のようであり未だ信じられぬ状況なので夢であってくれと願う。     
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