異世界紀行

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 いやいや、確かに失言ではあったが腹に穴を空けるほど乱心されるものでもあるまい。それだというのにこんな盛大に風穴空け、というか、いつの間に?痛くもないし血も出ていない。  「ちょっとやそっとでは死なないと言っただろう。大体さっきの言葉だとワタシまでゲテモノだと思って?ふざけないでほしいわ!私は確かに手足が多いかもしれないけれど隠せますから!透明にして見えなく出来ますから!たかだか3次元の世界しか知らない愚か者に美醜を語ってほしくないのだけれど?」  一体ここは何次元だと言いたいのかは全くの不明。でもまぁ確かに多次元世界なら人間の姿の方が変わっているのかもなぁ。なら君はこの世界においては醜い部類という事になるのか。乙。でもさっき人間の姿に嫉妬していたし、やっぱり自分は醜いと自覚しているんじゃないか、可愛いところあるんだな。オンナは肝っ玉!顔は二の次三の次ってね。  深淵の更にその片隅に固まっているゲテモノ共からどよめきがあがる。どうやら僕は一線を踏み越え、禁断の禁足地に土足でもってずけずけとあがりこんだことになるらしい。そんな最中。  「そこまでにしておきなさい」  思慮深く慈悲深い声が聞こえる。天より神々しい光とともにみすぼらしい老人が舞い降りる。蓮の花の中ほどに翁は鎮座ますまし。     
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