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雪の朝
さらさらさら……。
細かい粉雪が降るなかを、男は急いでおりました。
前夜から降りだした新しい雪はやわらかく、男の足をからめとります。ときに膝よりうえまで雪に埋まり、白い息を荒くつきながら、薄暗い森のなかを突き進みます。
ようやく淡い真珠色の朝日が森の中に射し込み始めたころでした。
はやく、はやく……大きなもみの木の下に置いてきたと聞いた。急がなければ、せめてもの償いに。
けれども気持ちばかりがあせり、足は思うように動かないのです。もがけばもがくほど、体は前に進みません。雪は降りつづき、男は……。
オルグは薄い毛布の下で目を覚まし、身ぶるいをしました。寝ているうちに雪が降ったのでしょう。
窓の桟に薄く雪が積もっていました。
オルグは堅くなった体をゆっくりと動かして、ほぐしました。胸に抱えているぼろ布の固まりをほどいて、中を見ました。
銀や金で作られた、華やかな装飾品が朝日を浴びて光りました。指輪、ブローチ、首飾り、髪飾り、耳飾り、マントを止めるピン、飾り棚に置くような小さな置物。
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