雪の朝

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 オルグは数を確かめて、また一個ずつ布にくるみました。それから首にかけた小さな革の袋に手をあて、お祈りするように、目をつぶり頭(こうべ)をたれました。  昨夜遅く着いた場所は、近くの鉱山で働く多くのものたちが暮らす町です。若い頭領さまに三人目のお子が産まれたお祝いが開かれると、十日ほどまえに風の噂に聞いたのです。  そんなお祝いの時には、市がたちます。オルグは市で装飾品を売ってお金に換えます。  身支度を整えました。整えた、といっても古びた服を身につけただけです。継ぎの当たったズボンやシャツ。重い羊のフェルトのマント。  どれもオルグの無精ひげや瞳と似たような、灰色をしていました。  食事をすませたら、町の商店の顔ききを教えてもらい、店を出す許しを得なければと、あちこち痛む体を精いっぱい早く動かしました。  手にしたのは、肩に担げるくらいの布袋がひとつだけでした。  オルグは許しを取りつけ、表通りに小さな露店を開きました。  大きな町にくらべれば、狭い通りです。二頭立ての馬車ですら、すれ違えないでしょう。  けれど、道は石畳が敷かれ、今朝がたの雪もきれいに掃き清められています。     
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