入場

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 気がつくと、血の涙が頬を伝っていた。  クソッ。年下イケメンなら鼻血だったのにッ。 「皆さんに紹介します。僕の彼女にして今日の新婦の、桜ちゃんですッ」  祭壇上で、超カッコよく彰君が宣言していた。  彰君、カッコ良いッ。  でも、こっちは宣言されたぐらいじゃ、ちっとも思考が追い付かない。 「せめて、花嫁の性別を言ってッ」  彰君はハハハと爽やかに笑っていた。  そんな混沌の最中に、 「自分、(さくら)大門(だいもん)と言いますッ。32歳。現役の刑事でありますッ」  花嫁が敬礼していた。  桜って名字かいッ。  やっぱオマエ、男だろッ。  どうしよう。  チャペル全体が、全く空気を読めずに戸惑っている。  ドスンドスンと、花嫁がヴァージンロードを征く。  その傍らには花嫁の父親だろう。  小柄な中年男性が、泣きながらエスコートしている。  泣いている理由は……、 きっと、考えてはいけないことだ。  やがて……、  祭壇に到着した桜さんは背筋をビシッと伸ばした格好で彰君の前に立つ。  流石は警察官。  いや、そういうことじゃなくて……、  せめて彰君がウエディングドレスだったらなッ。  そういうことでもないんだけれど、私は思った。     
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