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滴る鉄の網
「いやーマジ助かった! ついてきてくれてありがとな!」
鶴岡 隆(つるおか たかし)はそう言って、隣を歩く三沢 晴人(みさわ はると)に笑顔を見せた。
その言葉に晴人は苦笑する。
「ヒマだったし気にすんなよ。しかし、そのチャリすげぇ値段だったな」
晴人はそう言って、隆が押している自転車に目をやった。
隆は、彼の言葉を受けて誇らしげに、しかしどこか照れくさそうな笑顔を見せる。
「まあなー。コルナードの新作でさ、このモデルは絶対に欲しかったんだよ」
「コルナード…」
晴人は、隆が言った単語をそのまま返しつつ、自転車を見る。ハンドルとペダル周りをつなぐフレームには大きく『KoLNARD』の文字がペイントされていた。
彼はそちらを見たまま、隆に尋ねる。
「あんまし聞いたことないけど、海外のメーカーなのか?」
「ああ、イタリアのメーカーなんだよ。こういうタイプの自転車に関しては、めちゃくちゃ有名なとこなんだ」
「へぇ…」
隆の解説に、晴人はぼんやりとした声を返した。
その後で彼は、自転車の後輪に目を向ける。
「後ろのタイヤが普通じゃないのも、イタリア製だから…なのか?」
「ん?」
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