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晴人の疑問に、隆は立ち止まって振り返る。
彼が後輪を見ているのに気づくと、小さく笑ってまた歩き出した。
「ああ、ディスクホイールってんだよ、それ。イタリア製だからってわけじゃなくて、オレがつけたかったからつけてもらったんだ」
「ディスクホイール…」
晴人はつぶやきながら後輪を見つめる。それは彼が見慣れたタイヤではなく、1枚の円盤そのものだった。
普通であれば、車輪の中心と外周の間はスポークと呼ばれるいくつもの棒でつながれている。だが晴人が見ている後輪にはそれがない。
隆によると、このタイプのものをディスクホイールと呼ぶらしい。
ホイールには、先ほど彼が言ったコルナードとはまったくちがうアルファベット『Vestini』が大きく印字されている。
隆が歩くと自転車が進み、自転車が進むと後輪がゆっくりと回転する。
後輪がゆっくり回転すると、そのアルファベットもつられて反時計回りに動いていく。
晴人は頭を傾けてアルファベットの動きを見ていたが、やがて隆との距離が開きそうになると、それをやめて彼の隣へ戻った。
そしてディスクホイールを見た感想を述べる。
「自転車のことはよくわかんないけど、ディスクホイールはちょっとカッコいいな」
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