滴る鉄の網

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(なんだよもう…アイツのせいで、めんどくさいことになった…!)  晴人は顔をしかめた。自分を心配してくれたフォロワーに対して心を込めた返礼を送るが、胸の内には苦さばかりが広がっていった。  結局朝はフォロワーへの返礼に追われる形になり、いつもよりも家を出るのが遅くなってしまった。会社に遅刻することはなかったが、ペースを崩されたことで余計な疲れが出る。  これにより、午前中における仕事の能率が下がった。下がった能率とテンションをどうにか上げ、普段通りというところまで取り返した時には、すでに昼休みが終わりかけていた。 (うわぁ、早く食わないとヤバい!)  晴人は焦りながらパンをかじり、もう片方の手に持ったスマートフォンのロックを解除する。時間があろうとなかろうと、SNSのチェックは欠かせなかった。 (…ん?)  彼の目が、フォロワーから転送されてきた投稿に向かう。どうやら、『ジャギュリア』が運営によってネットゲームのプレイ権を剥奪されたらしい。  つまり、もう『ジャギュリア』はネットゲームの世界には存在しない、ということだった。 (おぉ、動いてくれたかー!)  この知らせに、晴人は顔を輝かせた。  だがすぐ我に返り、のんびりと嬉しがっている時間がないのを思い出す。     
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