滴る鉄の網

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(いつまでもどこまでもオレのせいって…一体何をどーしろっつーんだバカかよ)  晴人は対人モードで軍師役を買って出ることが多い。彼の作戦が失敗することでパーティが負けることも当然ある。具体的にあの時のこの作戦がよくなかったと言われれば、晴人も納得して謝ることもできるだろう。  だがそもそも対人モードはそういった後腐れがないように、メッセージ機能が制限されている。対人モードの戦闘中はメッセージを送り合うことはできず、マーカーと限られたジェスチャーしか使えない。  つまり対人モードは、その場限りで楽しくやってくれ、という設計だった。運営によって明文化されているわけではないが、対人モードを楽しむ層にはその認識が暗黙の了解として定着していた。  もちろん、対人モードを始めたばかりのプレイヤーであれば、不文律を理解していなくても仕方はない。晴人はそれを知らない初心者を見下すつもりはなかったし、自分たちの間で広まっているルールを理解しろと強制するつもりもなかった。  ただ、それにしても、である。ものには限度というものがあった。 (負けて腹が立つのはわかるぜ? オレだってそうだ…だから負けたくないって思って作戦立てるけど、無理な時は無理なんだよ。っていうか、文句があるなら具体的に言え)     
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