滴る鉄の網

52/98
前へ
/98ページ
次へ
 誰かから電話がかかったことで、画面が切り替わったことに驚いたのだ。 (タカからだ)  彼は、何事かと思って出てみる。 「…もしもし?」 ”おー、ハル。元気してっか?” 「ああ、元気だぜ」 ”…あぁ? なんだよ元気なさそうだな”  電話の向こうにいる隆は、晴人の声からすぐに彼の変調を『聞き抜く』。  それに晴人が驚いていると、隆は続けてこう言った。 ”時間あんなら出てこいよ。メシでも食おうぜ” 「…ああ」  晴人は、隆の言葉に微笑みながらそう返した。彼の気づかいが、とても嬉しく思えた。  待ち合わせ場所は、晴人のマンションから少し離れた位置にあるラーメン屋の前だった。隆は先に来ており、晴人を見つけると手をふって声をかけてくる。 「ハル、おせーぞ」 「わりぃわりぃ。…あれ? タカ、チャリはどうしたんだ?」 「自転車には留守番してもらってる。さあ、入ろうぜ」 「留守番…お、おぅ」  晴人は疑問を口に出しかけたが、隆が店内に入ってしまったのでそれを止めた。彼に遅れて店に入り、カウンター席へ向かう。  ふたりは席につくと、店員にそれぞれ注文した。 「チャーシューメン」 「オレ、バターコーン」  その後で店員が離れると、隆は晴人に尋ねた。 「ここ、どう思う?」 「え?」     
/98ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加