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彼女と出逢ったのは、この街の名所の一つである桜の木の下。 この桜は樹齢何百年という大木で小高い丘の上に植えられている。 周りにも色んな木が植えられているがその中でも一際目立つ存在感を放っている。 目立つと言っても決して威圧感があると言うものでは無く、優しく包み込んでくれるような印象で、街の皆からも愛されている。 ...いや、愛されていた。と言った方が正しいのかも知れない。 数年前のパワースポットブームによって一時期多くの人で賑わっていたが、今は静かなもので殆ど人を見なくなった。 街の人達はそれを寂しがっていたが、僕は本音を言うと今の方が好きだ。 多くの人が群がっていた当時はごみをポイ捨てしていたり、むやみやたらに近づいては写真を撮って木を傷付けるような事をしていたり、兎に角うるさくて行儀も良くなかった。 来る人が減るとごみも以前ほどは見なくなったし、傷付いた幹や枝なども少しずつだけれどマシになっている気がする。 とは言え、その時の名残はまだあって傷が大きい木ほど前の様には花を付けなくなり、元気がないものも多くて次第に花見に来る人すら少なくなった。 それが街の人がここから疎遠になった理由。
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