Accident.2 接近

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『あ、ティオ? あたし。ごめんねー、ちょっと手、放せなかったもんだから。で、何か用? エレンちゃんとデートじゃなかったの?』 「あ、ああ……」  だからデートじゃねぇんだけど、と言う文句が脳裏をよぎるが、口に出せばまた話が脱線しそうなので、これも何とか呑み込んだ。 「いや、実はちょっと、シティ駅まで来て欲しいんだけど」 『シティ駅って、メストルの?』 「そう」  ティオゲネスは、自身がエレンと落ち合った時、彼女が鞄を拾っていたことと、その中身を話した。 「――で、アレクはどう思う?」 『んー……そうねぇ。どう考えてもそんな大金、そんな所に落とさないわよねぇ』 「だろ? だから、ちょっとこっちまで来て欲しいんだ」 『何で?』 「だって、こんな大金、どう考えても駅の遺失物係の職務範囲外だろ?」 『本部は徒歩十分圏内よ? こっちに戻って、生活安全課に届ければ済むじゃない』  ティオゲネスは、瞬時沈黙した。 「……フツーに落としそうな場所に落ちてたなら、俺だってそうするけどよ。アレクだって言っただろ? こんな大金、ベンチと鉢植えの隙間に、隠すように落とすか? 休憩ついでに置いて忘れる場所でもねぇだろ?」  改めて指摘され、アレクも一瞬沈黙する。 『……でも、あたしが行ってどうするの?』 「駅の防犯カメラを調べたい。けど、CUIOバイト程度の俺じゃ、強引に見せて貰う権限はねぇし……まあ、その辺のネカフェから適当にハッキングしていいなら、勝手にやるけど?」  吐息を挟んだアレクは、『分かったわ』と言った。 『すぐこっち出るから。駅のどこ?』 「改札入る前にある、公衆トイレ。分かる?」 『オッケー。じゃ、十分後にね』
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