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今回は、特にヴェア=ガングの影は気にしなくて良さそうだし、組織の構成員が相手でなければ、アレクシスの戦闘力でも充分対処できるだろう。
「すみません。ちょっと宜しいでしょうか」
何人目かの通行人に、ラッセルが刑事の身分証を掲げる。
「どれくらい前から、こちらに?」
「ああ、えっと……」
声を掛けられた、二十代の男性は、ボトムのポケットから携帯端末を取り出す。
「分かんないな。時間なんか見てませんよ」
「そうですか。あのベンチと鉢植えの隙間に、何か置いてあるのを見ましたか?」
男性は、無情にも「覚えてない」と繰り返した。
礼を言って、男性に背を向けながら、ラッセルが呟く。
「望み薄だな」
ティオゲネスは、息を吐くことで同意を示した。
腕時計に目を落とすと、針は六時の五分ほど前を指している。
「今、ちょうど仕事とかガッコの帰りの時間帯だもんな……」
駅エントランスを通ったとしても、そう長時間は留まるまい。皆、家路を急いで、進行方向しか見ていないだろう。
防犯カメラを確認するにしても、どのくらい前からあったかを割り出すのに、果たしてどれくらい掛かるか――
そう思っていると、「悪い」とラッセルが一言入れて、ボトムのポケットから携帯端末を取り出した。画面をタップして、耳に当てながら駅エントランスの端へ移動する。ティオゲネスも、それに続いた。
「どうだった?」
訊いてから、「そうか、分かった」と言って、すぐに通信を切る。
「行くぞ」
「アレクから?」
「そ。大体分かったらしいぜ」
「早っ。もうかよ」
「ああ。エレンちゃんが、見つけた時間帯を大体覚えてたからな。その前後からチェックしたら、置かれた時間はあんまり離れてなかったらしい」
程なくたどり着いた監視ルームで、机に向かっているアレクシスと、その脇に立っているエレンが、ティオゲネス達を迎えた。
「見て、二人とも」
アレクシスが、キャスター付きの椅子ごと脇に避け、防犯カメラの一つに録られた映像を再生した。
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