6人が本棚に入れています
本棚に追加
「おい、ティオ?」
「ラス、追うぞ」
「えっ、追うって何を」
「あの女だよ、いーから来い!」
ラッセルの腕を引っ張ると、映像の中で見た特徴に、彼も気付いたらしい。
無言でティオゲネスに続いた。
「あ、あのっ」
「エレンはアレクと一緒にいろ」
口早に言って、アレクシスに目を投げ、前方を歩く女性を手で示す。アレクシスも頷いて、「エレンちゃん、行きましょう」とエレンを誘ったようだった。
***
「え、ちょっと、アレクさん!」
アレクシスに手を引かれ、エレンは甲高い声を上げた。
静かにするように、彼女が自身の唇に、立てた人差し指を当てる。
エレンも、慌てて手で口を押さえた。
「……何なんです?」
「エレンちゃんも見たでしょ? さっきの映像」
「あ、はい」
「あの中に映ってた女の人を、二人は尾行てるのよ」
「ええっ? で、でも、本当にあの映像の人なんでしょうか?」
エレンには、カメラが遠すぎて、よく分からなかった印象しかない。辛うじて、自分達が映っているのが分かっただけだ。
「だから、それを確かめに、一度本部へ戻るのよ」
早足で歩くアレクシスは、それきり口を閉じてしまった。
エレンはエレンで、アレクシスの歩調について行くので精一杯で、口をきく余裕などない。
CUIOの本部へたどり着き、エントランスを抜け、必要な機材のある部屋へ入った。
エレンは、上がってしまった息を整えながら、アレクシスが作業するのを見守る。
アレクシスが、ノート型パソコンを立ち上げ、パスワードを入力する。待ち受け画面が映し出されたパソコンに、彼女は接続ケーブルで、自身の携帯端末とパソコンを繋いだ。
アレクシスの指先が、忙しくマウスとキーボードの間を行き来する。必要な画像の鮮明化に要した時間は、モノの数分だった。
***
追いかけた女の背は、まっすぐ受付窓口のある部屋へ入った。普通の乗車券ではなく、特殊な列車に乗る為のチケットを買う場所だ。
女は、空いた窓口へ座って、駅員とやり取りしている。
最初のコメントを投稿しよう!