Accident.3 交錯

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「おい、ティオ?」 「ラス、追うぞ」 「えっ、追うって何を」 「あの女だよ、いーから来い!」  ラッセルの腕を引っ張ると、映像の中で見た特徴に、彼も気付いたらしい。  無言でティオゲネスに続いた。 「あ、あのっ」 「エレンはアレクと一緒にいろ」  口早に言って、アレクシスに目を投げ、前方を歩く女性を手で示す。アレクシスも頷いて、「エレンちゃん、行きましょう」とエレンを(いざな)ったようだった。 *** 「え、ちょっと、アレクさん!」  アレクシスに手を引かれ、エレンは甲高い声を上げた。  静かにするように、彼女が自身の唇に、立てた人差し指を当てる。  エレンも、慌てて手で口を押さえた。 「……何なんです?」 「エレンちゃんも見たでしょ? さっきの映像」 「あ、はい」 「あの中に映ってた女の人を、二人は尾行(つけ)てるのよ」 「ええっ? で、でも、本当にあの映像の人なんでしょうか?」  エレンには、カメラが遠すぎて、よく分からなかった印象しかない。辛うじて、自分達が映っているのが分かっただけだ。 「だから、それを確かめに、一度本部へ戻るのよ」  早足で歩くアレクシスは、それきり口を閉じてしまった。  エレンはエレンで、アレクシスの歩調について行くので精一杯で、口をきく余裕などない。  CUIOの本部へたどり着き、エントランスを抜け、必要な機材のある部屋へ入った。  エレンは、上がってしまった息を整えながら、アレクシスが作業するのを見守る。  アレクシスが、ノート型パソコンを立ち上げ、パスワードを入力する。待ち受け画面が映し出されたパソコンに、彼女は接続ケーブルで、自身の携帯端末とパソコンを繋いだ。  アレクシスの指先が、忙しくマウスとキーボードの間を行き来する。必要な画像の鮮明化に要した時間は、モノの数分だった。 ***  追いかけた女の背は、まっすぐ受付窓口のある部屋へ入った。普通の乗車券ではなく、特殊な列車に乗る為のチケットを買う場所だ。  女は、空いた窓口へ座って、駅員とやり取りしている。
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