Accident.1 不自然な落とし物

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 その後、一時は教会付属孤児院へ引き取られたものの、組織再興を目論む残党が、優秀なエージェントだったティオゲネスを組織へ呼び戻そうとする事件が起きた。  その際、組織の残党が孤児院を占拠し、ティオゲネスと共に暮らしていた孤児達が危険に晒された。そういうわけで、この件を機に、孤児院は閉鎖されることになってしまった。  まだ野放しになっている組織の構成員がいる限り、組織との小競り合いは続くだろう。しかも、周囲の人間を巻き込んで。  もう、組織の攻撃に対して、後手には回れない。  それを、嫌と言うほど思い知ったティオゲネスは、CUIOに雇って欲しいと、ラッセルを通じて頼み込んだ。CUIOにいれば、ヴェア=ガングの情報が入って来た時、いち早く動ける。  十六歳という年齢上、バイト扱いになるのにも、一悶着あった。ただ、ティオゲネスの戦闘能力が並外れているのは、CUIOの正規職員全員が認めている。  結果的に、(ティオゲネスから言わせれば形式的な)試験を経て、特例という形でのバイトとして働くことが承認された。  今は、ラッセルの家に居候させて貰い、週に三日のシフトで仕事をしている。  常識で考えれば、十代半ばの少年がやるバイトとしては、かなり危険度が高い。しかし、ティオゲネス自身は、そうは思っていない。能力値――特に、戦闘におけるそれが、通常の十代の子供とは桁が違うのだ。  加えて、そういつもいつも、戦闘案件が舞い込むわけではないし、ヴェア=ガングの情報が簡単に入るわけでもない。  よって、普段のティオゲネスは、ラッセルの事務作業を手伝っていた。  それも、ヴェア=ガングの事後処理の一環なので、決して無関係の仕事でもないのだけれど。 (じーっと座って半日過ごすのも、あれはあれでキツいよな……)  あふ、と眠気の名残のようにあくびが漏れる。  別に、事件事故が好きなわけではないが、やはり自分に事務作業は不向きらしい。どちらかと言えば、身体を動かしている方が性に合う。
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