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あぁ、香りを確かめていたのね。
亜美に貰ったシトラスの汗拭きシートのお陰で、汗じゃなくて良い香りがしたようで良かった!
亜美、ありがとう!と、私は心の中で感謝した。
理由が分かって少しホッとしたが、少しだけだったのは近すぎる距離感にドキドキが収まってくれないから。
先輩、近すぎ!
「亜美にシトラスの汗拭きシート貰ったんです」
私は内心あわあわしながらも平常心を装って返す。
「成る程、汗拭きシートね。俺も買おうかなー」
伊勢谷先輩は漸く少し顔を離してくれた。
それでも私の近くに先輩の顔があって、近すぎて直視出来ないんですけど……。
暫く私が視線を先輩とは逆の方向に泳がしていると、視界の端の先輩はやっと元の位置まで離れてくれた。
緊張から開放されて、私はホッと息を吐く。
「明日から俺は修学旅行だから、帰りは気をつけろ。痴漢がいるかもしれないし」
突然、先輩が真剣な声で言った。
「はい……」
先輩の優しさに、キュン。
でもそれと同時に、先輩の言葉に暫く会えないんだなと思い出してしまった。
修学旅行二泊三日でその後は土日を挟むから、五日間も先輩に会えない。
しかも翠先輩が告白する……
週明け、伊勢谷先輩は翠先輩の彼氏かもしれない……。
そう思うと心臓が変な音を立て始める。
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