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「瑠奈の場合、伊勢谷先輩と行きたいだけか。大好きだも「うわぁ!」
亜美がサラリと放った言葉に私は思いっきり焦り、大声を出して言葉を止めさせると、周りに聞かれたかどうかを確かめるためにキョロキョロと様子を窺った。
二十名程居る小さめの部室内、周りも自分達の話に夢中で聞こえていなかったようで私はホッと胸を撫で下ろす。
だって私の好きな人を知っているのは、この部室には亜美だけだから。
私は今亜美の言った通り、伊勢谷先輩に半年程片想い中。
伊勢谷先輩は二年生の男子バスケ部員だ。
私は彼にいつの間にか恋に落ちていた。
「そういうことね~。ごめんね瑠奈ちゃん、気付かなくて。お詫びにこの汗取りシートをあげるから」
亜美が謝りながらデオドラントの汗取りシートを一枚私に差し出した。
シートからはシトラスの爽やかな香りが届いてきた。
「……ありがと」
仕方ない、これで許してあげよう。
私は受け取ると念入りに全身隈なく拭き取る。
だって先輩に臭いなんて思われたら、死ねる。
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