雪のダイヤモンド

1/1
1人が本棚に入れています
本棚に追加
/4ページ

雪のダイヤモンド

「どうして、そんなに危ないことしたの!」 雪山の遭難から帰って来た病室。 愛菜は、目に涙を滲ませて言った。 「ごめん……。でも、おかげでこの写真が撮れたんだ」 将太は、一枚の写真を病室のベッドの上に置いた。 「すごぉい! めちゃくちゃ綺麗……」 愛菜は、目を輝かす。 そこには、写したはずの雪女の姿はなかった。 その代わりに、虹色の光を反射して、ダイヤモンドのように眩く散らばる雪が写っていたのだ。 愛菜の溢れ出る笑顔……それを見ると、将太は込み上げるほどに『生きている』という実感が湧いた。 「でも、本当に、無理しないでよ」 愛菜は、また目尻を下げる。 「だって、折角私……もうすぐ退院できそうなんだもの」 「ホント!?」 信じられなかった。 愛菜は、不治の病だった筈なのに。 「ええ。お医者さんも奇跡だって言ってたわ。将太が雪山から帰ってくる直前に、急に元気になって……信じられない回復をしたの」 将太の目から涙が溢れた。 そして……愛菜をぎゅっと抱き締めた。 滔々と降り続く雪の中。 雪女は、溶けてしまいそうな胸を押さえる。 「約束を破ったら、絶対に氷の塊にしてやるからな」 そっと呟いて、ダイヤモンドのように美しく、純粋な笑顔を浮かべる。 今も、忘れないその感情……それに『恋』という名のあることは知らない彼女だった。
/4ページ

最初のコメントを投稿しよう!