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雪のダイヤモンド
「どうして、そんなに危ないことしたの!」
雪山の遭難から帰って来た病室。
愛菜は、目に涙を滲ませて言った。
「ごめん……。でも、おかげでこの写真が撮れたんだ」
将太は、一枚の写真を病室のベッドの上に置いた。
「すごぉい! めちゃくちゃ綺麗……」
愛菜は、目を輝かす。
そこには、写したはずの雪女の姿はなかった。
その代わりに、虹色の光を反射して、ダイヤモンドのように眩く散らばる雪が写っていたのだ。
愛菜の溢れ出る笑顔……それを見ると、将太は込み上げるほどに『生きている』という実感が湧いた。
「でも、本当に、無理しないでよ」
愛菜は、また目尻を下げる。
「だって、折角私……もうすぐ退院できそうなんだもの」
「ホント!?」
信じられなかった。
愛菜は、不治の病だった筈なのに。
「ええ。お医者さんも奇跡だって言ってたわ。将太が雪山から帰ってくる直前に、急に元気になって……信じられない回復をしたの」
将太の目から涙が溢れた。
そして……愛菜をぎゅっと抱き締めた。
滔々と降り続く雪の中。
雪女は、溶けてしまいそうな胸を押さえる。
「約束を破ったら、絶対に氷の塊にしてやるからな」
そっと呟いて、ダイヤモンドのように美しく、純粋な笑顔を浮かべる。
今も、忘れないその感情……それに『恋』という名のあることは知らない彼女だった。
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