隣席の君

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 彼女はその後の授業中も眠り続け、悪びれる様子も無く、放課後に目を覚ましては俺に言 った。 「ねぇあなた。眠りほど不思議な状態ってないと思わない? 完全に意識がないのに息だけしていて、意識が戻る保障なんてないのに、ヒトはそれを眠りと名づけて毎日意識を手放すのよ。死んでいるのに限りなく近い状態なのに、意図も、簡単に。 なんだか私、怖いわぁ……」 突然訳の分からない事を言いわれて面食らいながらも僕は平静を装って言い返す。 「そんな事言たって、坂上さんだって授業中とか散々眠ってるじゃないか」 言葉だけは威勢がいいものの坂上さんの妙に大人びた雰囲気に気おされて、僕は椅子の上で及び腰になっていた。 「それもそうね。私が言ったって説得力ないかもしれないけれど、それでもわたしだって眠らないわけには行かないのよ。人間だもの。けれどいつも眠っているそんな私だから言えることもあると思うの」 突然”眠るって怖い”と言い出したかと思ったら”人間だから眠るわ”と言われて、だからと言って授業中に眠る必要はないと思うのだけれど、じゃあ一体彼女は僕にどうして欲しいのだろうと僕が動揺して黙っていると彼女は言葉を続けた。     
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