誠実の命日

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   駐車場から少し歩き、ビーチにつながる長い石段の上、ヤシの木の陰で金村がスマホを構えた。  絵に描いたような夏空を数枚、写真に収めてから、今度は自分をモデルに見立てて、イイ感じの写真が撮りたいようだったので、手伝ってあげた。 どれもオモシロ写真にしか見えなかったが、とにかく満足してくれたらしく、テンションの準備が完了したとのことで、それから一緒にビーチへとおりた。 「あー、夏だぁー!」 気持ち良さそうに両手を伸ばし、空を見上げる金村と、波打ち際を歩く。  太陽に反射して、金色に照る水面(みなも)。日焼けしたロン毛のサーファーはこれ見よがしに、そこを這うように横切って行く。潮騒と人々の笑い声は空へと消えて、またどこかから降ってきた。 叩いて投げてを繰り返されるビーチボールは、若い男女の不器用なコミュニケーションに思えた。  走り回る我が子を必死で写真に収めようとするお母さん、昼寝に徹するお父さん。 そこから少し歩くと、どこかの会社の集まりだろうか、様々な年齢の男女――男7女3くらいの集団―― が、バーベキューを始めたらしく、缶ビールを誰かれ構わずぶつけながら、乾杯を連呼して笑っている。 人の数だけ、モノがあった。全て、海にちなんだモノ。パラソルにせよ、レジャーシートにせよ、水着にせよ、特に黄色が目立つような気がした。
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