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「なんだよ、つまんねーなー」
金村が大きめの声でそう言って、僕の口元に近付けたビールのカップを離した時、隣の席で笑い声 ――明らかにこっちを向いて2人が笑っている―― がした。
金村の目はすぐに僕から、そっちへと動いた。あまりにも自然な視線の移動。小学校の給食の時間に、隣の班のコを見るみたいに。
そこにいたのが、柑奈と菜々子ちゃんだった。
「真面目すぎるっしょ? コイツ」
話しかけるタイミングも、呆れたような笑顔の作り方も、全てがお見事というべきだった。一瞬の躊躇いもなく放たれた言葉により、僕たちはあっという間に4人組になっていた。
柑奈の髪型は当時からずっと粟色のショートカットだった。
黄色地に水玉模様の入ったスカート付きのビキニ。白く豊満な胸の谷間を大胆に披露して、ビー玉のような丸い目を少し細め、 ――笑うというより、フフフ、とハッキリ笑った時の声を口にして―― ご機嫌そうな笑みを浮かべていた。
「君も結構しつこいけどね、困ったお友達」
僕と金村を交互に刺した視線。
毒の無い、かといって遠慮も感じられない、とても自然体な口調で菜々子ちゃんは言った。
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