誠実の命日

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     柑奈は連日、ナイトクラブに通っている。飲み潰れた夜には、菜々子ちゃんをエサに、金村という便利なアシを呼び出し、その後は2人で消えていく、というのがここ最近続いている柑奈のパターンなのだそう。  今月は4日前で3度目。先月も、その前の月も同じ様な頻度で彼を呼び出し、菜々子ちゃんはそれを度々注意していたが、笑って誤魔化し、聞く耳を持たず。 仕事も休みがちで、周囲にも迷惑が掛かっている。何とかやめさせようと、金村の家に行き相談しようとすると、彼の部屋に、柑奈のシャツが落ちていたらしい。 泊まったりしてるの? と単刀直入に聞くと金村は、いいや、と小首を傾げて真顔 ――嘘を言っている時の彼のクセ、僕も菜々子ちゃんもそれは知っている―― になったという。 そして今日、仕事を無断で休んだ柑奈と大喧嘩になり、数時間たった今、冷めぬ怒りを落ち着かせる為、彼女は連絡をくれたのだった。  電話が終わると、僕は脱力した。 書きかけのメッセージカードは、破ることなく、シワ一つ作ることなく、綺麗な状態でゴミ箱に捨てた。自分でも驚くほど、静かな手際だった。

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