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朝。
「重い…」
(なんか乗っている)
私はベッドの上、寝返りを打とうとしても動けない。
(これはもしかしたら、金縛りか…。あるいは…)
「ジョセフィーヌか!」
「俺だ」
「ぎゃあ」
「上司に失礼な」
私のベッドの上。馬乗りになって腕組みをしている。
「置物のタヌキと雇用主を同列に並べるとは」
「普通、雇用主は家政婦のベッドにいません」
「普通、家政婦は寝坊をしない」
「え!?」
「おそよう、さやか。朝の5時だ」
「朝の5時は夜じゃないですか」
「朝の5時は朝の5時だろう」
「朝の5時なんて夜だもん…むにゃむにゃ…」
「“婚活リベンジ”」
「な、なんで知ってんですか!」
「金純が“北條飛鳥を陥れて惚れさせよう大作戦”というメールを寄越した」
「げ。金麦の野郎!私には“ストーカー呼ばわりされないようにナイショにしろ”と言ったくせに!」
北條さんは、私のお腹に乗ったまま、妖艶な微笑みを浮かべている。私を見下ろす眼差しは潤んでいて甘い。実に嬉しそうだ。
「俺は条件がいいから」
「はい?」
「家柄と財産と見栄えが良いから」
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