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遊園地のお店前で私は激しく文句を言う。
「普通、サーティツーの雪だるま大作戦はですね!」
モテ新妻目指して修行する筈の私。指南役の北條さんにアイス薀蓄を語る。
「無難なチョイスをせず、ボッピンフラワーとギャーニバルで」
「え。ヤダよ、そんな派手なものに派手なもの。人間の食べる色彩じゃあない」
「サーティツーの雪だるま大作戦だから!バニラやイチゴは買わない!」
「ならば、大納言と抹茶…」
「冒険も大事!」
「う」
遊園地の中、アイスを食べる。
「……意外とおいしい……」
「でしょ」
「さやかのもちょうだい」
「どーぞ」
差し出したアイスを見て、不機嫌になった。
「“どーぞ”じゃなくて“あ~ん”だろ。デートしてんだぞ!色気を出せ艶を出せ」
「げ」
アイスを口に突っ込んでやったら、満足そうな顔をし、そのあとは真剣に園内マップを見ている。
「観覧車に乗ろうと思う」
「普通、観覧車は最後ですよ!」
「観覧車で鳥瞰図の園内マップを脳内に」
「お~い、北條さーん。デートに鳥瞰図は不要ですよぅー」
「デートにはマクロ体系が不要なのか、さやか!」
「そんな難しい覚悟は要りません」
「タイムスケジュール…フローチャート…」
「普通に楽しんで時間が余ったら帰って、足りなかったらまた来れば良いです」
「また来ればいいのか」
「はい」
「しかし来年の今頃、さやかは人妻かもしれないんだぞ」
「え!?」
「金純の就活・婚活は成功率業界トップ。だから来年はトコロテンのようにツルリとさやかは人妻に…」
「トコロテン人妻…」
「…人妻になったさやかと平日の夕暮れ。サーティツーの雪だるま大作戦。
最後に観覧車、薬指には結婚指輪…」
「凄い妄想ですね。私、来年の今頃も間違いなく、あなたとボッピンフラワーとギャーニバルですよ。
北條さんこそ、業界ナンバーワンの婚活をした上に、釣書も由緒正しいんだから!
来年の今頃は美しい奥様と指輪をキラリーン観覧車!」
「俺は惚れた女に指を縛られるために、色々努力してきた」
「SMプレイですか?」
「…頑張って張った伏線も、逸脱される。
つかまえたかと思えばツルンと逃げるトコロテン女」
「気の毒に」
「だが俺は観覧車に乗る!鳥瞰図は大切だ!」
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