声帯

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「なに簡単に騙されてんのよ! 私、カオリだよ!サオリお姉ちゃんじゃないよ」  声にならないのだろう。おばあちゃんから次の言葉が出てこない。 「おばあちゃん、言ってたよね。私はオレオレ詐欺には騙されないよって。それがなによ!こんな簡単に騙されちゃって」 「・・・・・・え、じゃ、じゃあ、今の話は」  私は悲しくなった。  おばあちゃんのためとはいえ、騙している私に。  そして、こんなにも孫思いなおばあちゃんに。 「オレオレ詐欺は、男だけじゃないんだよ。最近は、娘孫を使った詐欺もあるの。だ、ダメだよ、こんなあっさりと信じちゃ・・・・・・」  言いかけて、私は嗚咽を漏らした。  やはり、私には出来るはずがない。 「あ、あのね、ここからは本当の話、なんだけど」  本当は、これで話は終わらせるつもりだった。  でも、やっぱり、おばあちゃんには聞いて欲しかった。
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