3人が本棚に入れています
本棚に追加
「て言うかさ、孫娘だったら、爺も婆もどっちも騙せんじゃね? って思った訳よ」
私は思わずその先輩を睨みつけてしまった。
この人は、私が、大好きなおじいちゃんとのお別れを済ませたばかりだと知らないから、こんな無神経な事が言えるのだと。
しかし、以前からそんな周りの空気などお構いなしの先輩は、私の中から沸き上がってくる憎悪になんて、気が付くはずもなかった。
「私がやってもいいんだけどさ。ほら、私この声じゃん? 絶対にばれると思うんだよね」
だからって、何故私を選んだんだ、この人は。
「カオリってさ、ちょっとアニメ声で可愛いじゃんか。だから、可愛い孫娘役にぴったりなのよね」
私の胸中を察したわけでもないだろうけど、先輩はそう付け加えた。
私は、見られない様に拳をきつく握って、気持ちを悟られない様に答えた。
「今度の土曜日で、いいでしょうか」
先輩は、あっさりとその提示を受けた。
「分かった。じゃあ土曜日の十時にここで待ってるわね」
ーーーーー
最初のコメントを投稿しよう!