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「・・・なに?」 涙を堪えながら、何事もないかのように、私はできるだけ無機質な声で返事を返した。 「あのさ、愛実に渡したいものあるんだけど」 「渡したいもの?」 私が訊くと彼は私の手を離し、パーカーのポケットをまさぐった。 「はい、これ」 「?」 貴哉が差し出したのは、綺麗にラッピングされた立方体の小さな箱。 「とりあえず開けてよ」 そう促され、私は箱を受け取るとラッピングを丁寧に剥がした。 「──!・・・なんで?」 箱には私が大好きなブランドのロゴが入っており、開けずとも中身は容易に想像できた。 「なんでって、今日誕生日だろ?」 「あ」 連日の仕事の忙しさで、誕生日のことなんてすっかり頭から抜け落ちていた。 だけど、貴哉、誕生日プレゼントなんて。 私達、もう別れたのに。 少し震える手で箱をゆっくり開けると、私が随分前に欲しいと言った指輪が入っていた。
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