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「私に、会いに来てくれて……ありがとう」
腕に、額を押しつけた。結城君が、大きなため息をついて、私の頬に触れた。
「今、キスしたら……とめられへんなる」
私は顔をあげた。
「ええよ……とめられへんで」
何度目かはわからない。今まで、始まれば目を閉じ終わるのを待つだけだった。聞こえるのは結城君の声だった。それでも私にとって手の主は、結城君でなくても、結城君だとわからなくてもよかったのかもしれない。
純粋でないのは私の方だ。寂しさを埋めてくれればきっと誰でもよかった。だけど、求めてくれたのが、結城君でよかった。
「この先もずっと、百音のこと誰にも触らせたくないねん」
結城君に体ごと引き寄せられて、バランスを崩した。腕に支えられる。力が抜けていく。
「ベッドに上がろ」
ベッドの真ん中当たりに座った。結城君が端に膝をかけた。私の頬に手を添える。目を閉じた。そのまま、寝かせられた。結城君の重みがかかる。
私は、動悸の渦に巻き込まれている気がした。手が首もとに触れた。ついすくめる。
「ごめん」
結城君が体を起こした。前にも見たつらそうな顔をしている。
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