253人が本棚に入れています
本棚に追加
少しだけ離れた場所から、人見さんを描きとっていった。この時間が終わったら、二度と会うことはないだろう。モネの絵を観る人見さんを目に焼き付けておこうと思った。服の色味、質感まで覚えておきたかった。
「最後に、手を……右手を描かせてください」
本当に穏やかに笑う人だと思った。
「どうしといたらいい?」
自然に体の横に置いてもらった。
甲に浮き出る血管や指の関節も爪もすべて描いた。
「描けました。それと身長はいくつですか?」
「身長? 縮んでなければ184くらい」
多分、結城君もそのくらいだった。描き始める前から、満足いくものができあがる気になった。
人見さんに鉛筆を貸して欲しいと言われた。
「スケッチブックを……一枚使わせて」
新しいページを開いて渡した。
最初のコメントを投稿しよう!