印象、日の出

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 少しだけ離れた場所から、人見さんを描きとっていった。この時間が終わったら、二度と会うことはないだろう。モネの絵を観る人見さんを目に焼き付けておこうと思った。服の色味、質感まで覚えておきたかった。 「最後に、手を……右手を描かせてください」  本当に穏やかに笑う人だと思った。 「どうしといたらいい?」  自然に体の横に置いてもらった。  甲に浮き出る血管や指の関節も爪もすべて描いた。 「描けました。それと身長はいくつですか?」 「身長? 縮んでなければ184くらい」  多分、結城君もそのくらいだった。描き始める前から、満足いくものができあがる気になった。  人見さんに鉛筆を貸して欲しいと言われた。 「スケッチブックを……一枚使わせて」  新しいページを開いて渡した。
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