253人が本棚に入れています
本棚に追加
「なに、その威力。家まで待てへん」
いきなり抱きしめられる。頬にコートのボタンがあたる。やっぱり包まれるのは心地良い。鼓動が近くにある。目を閉じて聞き入った。
それにしても長い。
「家、もうすぐやん」
「そやな」
結城君がようやく放してくれる。
角を曲がれば結城君の下宿につく。歩き始めた。
「百音……あんなあ……」
「なに?」
「俺、百音のこと大事にしたいと思っとるんやけどな……」
「ありがと」
言葉にされるのは、結構嬉しいものだ。
「せやけど、今、めっちゃ……したい……嫌なんやったら、このままでかけて……」
絵が描けなくなっていたことを、まだ気にしてくれている。
私はずっと、結城君のことを誤解していた。
「嫌やないし……」
私もちゃんと言葉にしてみた。
「ごめ、聞き取れへんで……」
声が小さすぎたようだ。
「私も、したい」
言った途端に恥ずかしさがこみ上げて、私は自分の顔を覆い隠した。
最初のコメントを投稿しよう!