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「違うん。ドキドキしすぎて……」
結城君が眉根を寄せた。
「百音……あかんて……可愛すぎ……」
空気混じりの声で言う。私の額にキスをした。それから頬にも。耳元で名前を呼ばれる。呼吸が耳をなでるから、きつく目を閉じる。耳の葉を舐められた。
「めっちゃ、好きやで………」
ため息がこぼれた。今までと、全然違う。脇腹に触れた指先から熱が伝わる。少しずつ露わにされていく。私は疼きに耐えていた。結城君の唇が私の体をなぞる。
幾重にも幾重にも色を置いていく。きっと、ほんのり赤みがかった桜色だと思った。
色が私の体を埋め尽くしていく。次第に、深く深くなっていく。
なぜだろう、今までより深く繋がった気がした。すべての意識が結城君とつながった場所に奪われる。
いつだって、少しは気持ち良かった。でも違う。声が抑えられない。体が勝手に動く。
唐突に『印象、日の出』が思い浮かんだ。薄暗い世界に、太陽だけが鮮やかだった。
赤く円く描かれた太陽。
赤が脳裏に広がっていく。
「あかん、もたへん……」
短く呻く。動きをとめたけれど、肩で息をしている。
結城君が、私から体を離した。
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