印象、日の出

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 私は泣いた。泣きじゃくった。大切な人を失うことへの恐れかもしれない。この温もりを知っているのなら、耐えられる気がしない。あの子はどうなってしまうんだろう。  あの子のために私ができること、私にしかできないことが、ある。  結城君は私が泣き止むまで、待っていてくれた。しゃくり上げて、なかなか話せるようにもならなかった。  やっと、呼吸も落ち着いた。 「どうしても、描きたい絵があるん」  結城君が、私の頭をそっと撫でた。  あの子のために、人見さんをみた瞬間の不思議な感覚を、再現する。 「音を忘れる絵にしたい」  母の願いとは正反対の絵を描く。 「できるだけ、早く描き上げたいのもあるし……終わったらバイトにも行かなあかんと思うし」 「バイト?」 「キャンバス、五万円以上すると思う。絵の具もたくさん使うし、額までと思ったら十万円よりもっとかかる」  結城君がため息をついた。 「情けないなあ……俺が何とかするって言えへんで、ごめんな……」  そんなことは望んではいない。 「キャンバスの組み立てを手伝ってもらえたら、すごく助かるから」  モネ展へ一緒に行った日に、初めてまともに向き合った。それまでの私は、流されていただけだ。それでも、無意識に感じ取っていたのかもしれない。この人は大丈夫だと。  結城君は家まで送ってくれた。
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