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目の前で結城君の顔が歪んだ。なぜそこまで辛そうなのかわからない。
「ごめん、繊細な絵を描く子やってわかったのに……」
今にも泣き出しそうだ。予想と違う反応に焦る。
「別に結城君のせいにしたかったんやなくて」
「俺のせいやって」
責めるつもりで言い出したわけではない。
「違うん」
取り繕おうとしているのに、涙が溢れてしまった。
「ただ、描きたいだけやの……」
両手で顔を覆った。堰を切ると止まらなかった。
結城君は、私の肩をさすってみたり、頭を撫でてみたりしている。どうしたらいいのかわからないのだろう。私もわからない。だけど、そばにいてくれるだけで、よかった。
なかなか泣き止まない私を毛布でくるみ、遠慮がちに両腕で包んでくれた。
「美術館に連れて行ってくれてありがとう」
鼻をすすりながら、言った。
「描きたくて……描きたいのに……どうしたらいいのかわからへん」
結城君は私の額にキスをくれた。
「しばらく会うのやめてみよ」
会わないと言われると、心がきしむ。
「描けるようになったら連絡してな」
毛布ごと抱きしめられた。
「待っとるから……」
私は頷く。思っている以上に、依存している。頷いたものの、描けもしない会えもしないで、私はどうなるのかと不安にかられる。
少しだけ、彼に体を寄せる。
「もう少し、こうしといて……」
大きな手で頭を撫でてくれる。
「絵のことなんもわからへんけど、百音の絵……めっちゃきれいやった」
どうでもいいと思われたと、決めつけていた。
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