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 浅木は、アマチュアのカメラマンである。 プロの間でも一目置かれている腕で、 専門外のはずの美大の友人でも、その名を知っている人は多い。 高校生の時、あるギャラリーで見た図録の写真が、あたしが陶芸を始めたきっかけだった。  彼の知人のオブジェ作品を撮ったものだったが 背景の選び方、光の使い方に 披写体への深い愛情を感じた。 このひとの目で、自分の作品を撮られてみたいと思ったのだ。 「どう? 学校の方は」 「色彩感覚が、とにかくダメなんです。丁寧なのは誉められるんだけど、人を引き込む迫力とか 遊びが無いんだよって」 「田中さんらしいなぁ」  独り言のように言って、ちょっと微笑む。 「田中さんは彼氏いるの?」 …また唐突に痛い話題を振るっ。このひとはっ。 「……どっちに見えます?」 「んー、悪いけど、そういうことには全然関心無いって感じがするな。"あたしの青春は陶芸オンリーよ"っていう」 「ひっどーいっ! どうせ浅木さんから見れば、あたしはコドモですよぅ」 「田中さんは、まだまだこれから変わっていくよ。いいねえ若いってことは。うらやましいなあ」  一人で頷いてるのを見ていたら、ちょっと憎らしくなるわ。 「そんな、オジサンくさい言い方止めて下さい。まだ31でしょう?」 「もう31だよ。青春はとっくに卒業しちゃったな」  黄昏の欠片も無い明るい目をして、 そんな嘘言わないでよ。あたしの太陽。
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