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「睡。」
水を飲む手を止めて、睡がこちらを向いた。
「起こしちゃった?」
申し訳無さそうに微笑む。答えの代わりに言った。
「お水。あたしにも頂戴。」
乾いた大きめのコップに並々と水を汲んで、
静かに歩いてくる。
ベッドに起き上がったあたしを背中から抱き締め、コップを手に持たせる。
両手であたしの手を包み、あたしの口まで運んでくれる。
流れ込んでくる水の冷たさで、体の機能がゆっくりと動き始める。
掌から、彼はエネルギーをも送り込んでくれているのかも。
裸の背に、睡のザクッとした木綿のシャツの肌触りが心地よい。
「いい天気だね」
両手で包んだ乳房の先端に指先で悪戯しながら、耳元で睡が囁く。
まだ少し鈍い余韻が残っていて、
後頭部をチカリチカリと走り始める。
「週末は、また台風だって」
今年は台風の当たり年とかで九月になって毎週末、
台風の上陸か、その影響で大雨が降る。
「ごめん、睡。いつも」
そういえば、ここずっと週末ごとに、寂しさに耐えきれなくて彼を呼んでしまう。
「何でいつも謝るワケ?俺は、寧ろ得してるんだぜ」
この子は、何もかも知ってる。知っててあたしに付き合ってくれてるんだ。
「ありがとう。」
寝るだけの関係で、ごめん。
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