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「あたし、他に好きな人、いるんだからね。ずっと片想いだけど、ホントだからね。」
初めて口説かれた時からずっと言い聞かせてるのに。
「大丈夫。俺には美森(みもり)みたいなタイプが一番合ってるし、美森も俺みたいなタイプと、絶対幸せになるんだ。俺たちの将来はそう決まってる。俺、知ってるんだ。」
あたしを抱き締め、いつも自信満々でそう囁く。
…そんな予感がするとか、そうありたいとか、ではなく。
「だから、いつもそばにいてやりたい。
未来のパートナーが苦しんでいる今、付き添ってやれる。
それは、とても嬉しいことなんだよ、俺には。」
そんなこと言ってくれても、
あたしは睡の優しさな報いるためのものを、何も持っていないわ。
「明日、土曜だから講義ないだろ? 映画でも行こうよ」
玄関先で振り向き様に言う睡。
「…ごめん。約束がある」
彼の顔色が一瞬だけ曇った。
「そっか。じゃ、また」
屈託の無い彼の笑顔に、胸が痛くなる。
…あたしは、この子にひどいことをしている。
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