十三枚目 未来へ

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「ママー、それなぁに?」 「これはね、ママの宝物なんだよ。パパがママにくれたすべての絵なんだよ。」 女性へと成長した奏は母親の表情で答えた。 子供を産むのは正直奏の体には厳しいと言われていたが、24歳の時一人娘・千嘉≪ちか≫を産んだ 「パパはね、ママを三年も、ママを描きながら待っていてくれたの。」 「ねぇ、ママ。どうしてパパはママやちーちゃんのことをいっぱい描くの?幼稚園の皆がね、いいなぁって言うの。皆はそんなことしてもらわないんだって。」 「それは、ママとパパの約束なんだよ。」 「ただいまー。」 「あ、パパだー!!」 そこに帰ってきたのは、スーツを完璧に着こなした楓真だった。 そして駆け寄ってきた愛娘を抱き上げた。 「ただいま、千嘉。今日は幼稚園楽しかったか?」 「うん!蒼ちゃんとおままごとしたの!!」 「そっかぁ。」 楓真は千嘉を抱いたまま、ダイニングへ行った。 「おかえりなさい、パパ。」 「ただいま、ママ。」 この家のリビング・ダイニングにはたくさんの絵が飾られている。 それは楓真が描いた家族の絵。 さすがに毎日は描けなくなったが、毎週描いている。 今は美術雑誌の編集の仕事をする傍ら、副業で細々と画家活動もしている。 でも結構人気画家で、小説の表紙やCDのジャケットを描いたりもしている。 家族三人で夕飯食べた後、 「パパ―、お絵かきしよう!!」 愛する娘に呼ばれた。 千嘉は楓真に似てか、絵を描くことが大好きで、将来画家になりたいらしい。 「パパ、何描こっか?」 「じゃあ、ママ描こうか?」 「うん、ママ描く―!!」 奏は愛する家族が自分を描いてくれるという幸せの中にいた。 約30分後、千嘉と楓真は奏を描き終えた。 「わぁー!!パパ、すごーい!!」 「だてに7年もママのこと描いてないからね(笑)」 千嘉は、奏のもとに自分の絵と楓真の絵を持って、走り寄った。 「ねぇ、見て!ちーちゃんとパパね、ママのこと描いたの。パパの絵すごいねー!!」 「そうだね!」 楓真は愛するものが増えた幸せの中にいた。
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