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「ママー、それなぁに?」
「これはね、ママの宝物なんだよ。パパがママにくれたすべての絵なんだよ。」
女性へと成長した奏は母親の表情で答えた。
子供を産むのは正直奏の体には厳しいと言われていたが、24歳の時一人娘・千嘉≪ちか≫を産んだ
「パパはね、ママを三年も、ママを描きながら待っていてくれたの。」
「ねぇ、ママ。どうしてパパはママやちーちゃんのことをいっぱい描くの?幼稚園の皆がね、いいなぁって言うの。皆はそんなことしてもらわないんだって。」
「それは、ママとパパの約束なんだよ。」
「ただいまー。」
「あ、パパだー!!」
そこに帰ってきたのは、スーツを完璧に着こなした楓真だった。
そして駆け寄ってきた愛娘を抱き上げた。
「ただいま、千嘉。今日は幼稚園楽しかったか?」
「うん!蒼ちゃんとおままごとしたの!!」
「そっかぁ。」
楓真は千嘉を抱いたまま、ダイニングへ行った。
「おかえりなさい、パパ。」
「ただいま、ママ。」
この家のリビング・ダイニングにはたくさんの絵が飾られている。
それは楓真が描いた家族の絵。
さすがに毎日は描けなくなったが、毎週描いている。
今は美術雑誌の編集の仕事をする傍ら、副業で細々と画家活動もしている。
でも結構人気画家で、小説の表紙やCDのジャケットを描いたりもしている。
家族三人で夕飯食べた後、
「パパ―、お絵かきしよう!!」
愛する娘に呼ばれた。
千嘉は楓真に似てか、絵を描くことが大好きで、将来画家になりたいらしい。
「パパ、何描こっか?」
「じゃあ、ママ描こうか?」
「うん、ママ描く―!!」
奏は愛する家族が自分を描いてくれるという幸せの中にいた。
約30分後、千嘉と楓真は奏を描き終えた。
「わぁー!!パパ、すごーい!!」
「だてに7年もママのこと描いてないからね(笑)」
千嘉は、奏のもとに自分の絵と楓真の絵を持って、走り寄った。
「ねぇ、見て!ちーちゃんとパパね、ママのこと描いたの。パパの絵すごいねー!!」
「そうだね!」
楓真は愛するものが増えた幸せの中にいた。
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