十二枚目 心願成就

4/6
4人が本棚に入れています
本棚に追加
/66ページ
とある東京の美大―――。 「楓真―、今日バイト?」 「無いけど。」 「なら、どっか行こうぜー!」 「いいよ。」 楓真は大学三年になっていた。 美大生はおしゃれな友達も多いからか、大学生になってから服装にも気を配り、一段とかっこよくなっていた。 街を歩いていればスカウトされることも多いが、楓真は全く興味を示さなかった。 「あの!上木くん!!……今度、私を描いてくれないかな?」 美大生特有の遠回しの告白だ。 だけど、楓真は奏以外の女性を一度も描こうとはしなかった。 「ごめんね。」 「……そっか。」 そう言うとその女生徒は去っていった。 「今の子可愛いじゃん。何がダメなの?」 「ダメってわけじゃないよ。僕が描けないんだ、……彼女以外。」 「彼女って付き合ってる人いないんだろ?ならいいじゃん、描いてあげれば。お前、顔良し・スタイル良し・センス良し、その上絵も上手い。もったいないぞ、その才能。」 男2人で校門へ向かって歩いていた時、前から一人の友達が来た。 「なぁ、校門のところで上木のことさがしてる人いたんだけど。」 「誰だろう?」 「また告白か?」 楓真はたまに他校の生徒からも告白を受けていた。 楓真自身もそう思っていた……。 しかし校門にいたのは、楓真が描きたい人だった。 「奏……?」
/66ページ

最初のコメントを投稿しよう!