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翌日、楓真は隣で真剣な顔をして授業を受けてる奏を見て簡単なスケッチを描いていた。
先生にバレないように描くのは、案外スリル満点で面白いと楓真は感じていた。
簡単なスケッチを描き終えると、楓真はスケッチブックを閉じた。
さすがに細かいところまでは授業中にやるものじゃない。
その後、昼休みに入り楓真は美術室に向かった。
正直奏をスケッチしてるなんて他人に知られたくなくて、昼休みには誰も来ない美術室で弁当を食べ、スケッチを再開した。
カギは顧問の先生に絵を描きたいって言えば、くれる。
今までも時々、一人になりたいときに使ってる手法だ。
シャー…シャッ…
一人きりの静かな空間に紙の上を鉛筆が滑る音が響く。
楓真はこの音がたまらなく好きだ。
「…できた。」
思いのほかうまく描けた。
真剣にノートを取る伏し目がちの美少女。
まだ時間があったので、楓真はもう一枚描き始めた。
大体のスケッチができた時、ちょうどチャイムが鳴った。
楓真はスケッチブックを閉じ、弁当を持って美術室を出た。
教室に入ると大抵の生徒が座って談笑中。
それは奏も一緒で、楓真はどのタイミングで絵を渡せばいいかわからなかった。
とりあえず5限目の用意をロッカーから出して、席に着いた。
すると、奏が楓真が来たことに気づいて声をかけた。
「ねぇ、絵描けた?」
楓真は目を丸くした。
周りに友達もいるのになぜ今言うのか、堂々としすぎな奏に呆気に取られてしまった。
「え、あ、描けたけど…。」
「絵って何のこと?」
奏の傍にいた女子が案の定尋ねてきた。
「上木くんに私の絵を描いてってお願いしてたの。」
案の定奏は正直に答える。
楓真はこれじゃ自分が隠れるように一人で美術室で描いた意味がないと思った。
「へ、へぇー…。」
正直、女子は俺を気味悪がってるだろう。まぁ、前髪で目元隠してるしな。
夜にコンビニに向かった時、職質受けたこともあるけども…。
「うん、上木くんってすっごい絵がうまいんだよ!あ、絵見せてよ!!」
楓真は絵を渡した。
「すご…。」
その絵に奏の傍にいた女子も感嘆の声を上げた。
奏は嬉しそうに満面の笑みで「ありがとう」と言った。
楓真はその顔にドキッとした。
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