副団長の苦悩。

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王国騎士団第2師団副団長ハリム・ウェントソンには気になっている女性がいる。 ハリムの所属する第2師団は現在王都に在留しており、日々王都郊外にある騎士団訓練所で鍛練の毎日を送っていた。 ハリムの直属の上司、ゲイズ師団長は国の英雄と言われている。 長年に渡り国境を脅かしてきた東の隣国との小競り合いの日々を力業で解決した脳筋だ。 おかけで国は今平和そのものであり、ハリムの所属する第2師団は戦場に出ることなくひたすら訓練づけの日々。 英雄の率いる第2師団には将来有望な貴族の子息も多く、第2師団が訓練所を使用している時間には訓練所の周囲を見物の女性たちが取り囲む。 貴族の令嬢から玉の輿狙いの町娘から一部のコアなファンまで多い日には数十人単位で。 その中に彼女はいた。 ほぼ毎日。 雨の日も風の日もやってくる。 最前列に詰め寄る肉食系女子から少し離れた後ろの方で一人ポツンと立っている。 どこかの下位貴族の令嬢なのだとは思うが、舞踏会では見かけたことがない。 彼女の存在を意識し始めたのは一月ほど前の雨の日。 なかなかに酷い雨の日で途中で雷まで鳴り始めていた。
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